晩年の源氏に降嫁した帝の愛娘。その幼さが源氏を失望させ、柏木との過失を招く。源氏の老いと苦悩を浮き彫りにする正妻。
歴史の中で、女はいつも生きにくい思いをしてきました。権力を持っていたのが、いつも男だったからです。けれど女であろうとも、自分の意志をはっきり持ち、自分の行動に責任を持った女は、そう不幸な一生を送ってはいません。
女三の宮は帝の娘という最高の身分。もっとも権力に近い高貴な身分に生まれた女性でした。父帝の限り内愛に包まれて育っています。ところが、ついに自己形成をすることなく、幸せから遠のいた一生を送ってしまうのです。もっとも本人は不幸の自覚すらあまりなかったのですが。
そしてこの女三の宮の存在が、源氏の君の栄華の裏の苦悩と老いを浮きぼりにしていきます。